灰の中を駆けるくらい、どうということは無いと思った
どんなに汚れたって、体の中まで汚れるわけではないと信じた
汚れた服を脱ぎ捨てれば、また同じように愛されるはずだと信じた
駆け抜けているうち ....
めごきめごきめごきと
前触れもなく音がして
ああこれは歯車の音だと
周りを見渡しても見当たらない
どこの歯車
どこに歯車
めごきめごきめごきと
絶え間なく音がして
一人きりの浴槽で ....
<優しいままでいておくれ>
くたばりくたばり仰向けば
変わり者を見る人の群れ
思い出だけで奮い立ち
いいことあるさと言い聞かせ
嘘かほんとか分からぬままに
答えることが求められ
....
夜
塾が閉まるぎりぎりまで
あなたと競うように
居残り勉強を続けていた
たった二人で閉じこもっていた夜の教室
そのためだけに生きていたような半年間
あなたにだけは負けてなるものか、と
....
<くちづけ>
誰かに見られたくちづけは
あいまいに淡く消えていく
誰かに見せようと思えば見せられたのに
それでも誰にも見せなかったくちづけは
甘く鋭く残っている
いつまでも
いつ ....
<カレンダ・メッセージ>
十一か月前に
落書きしたのは
十二月のカレンダの裏へ
何と書いたか
思い出せずに
痛痒の中で
きみと過ごす一年の終わり。
....
今時手紙だなんて
何の意味があるのか
下書きまでして
何の意味があるのか
800円もするのに二通しか入っていないレター・セットに
何の意味があるのか
細くて伸びやかな青いインク ....
あの不安定だったひととき
この人のためなら
自分が持っているすべてを
投げ打っても構わないと思った
自分はこの一時、血迷っているだけなんだろうな、とは気付いていた
一晩も経てば、正気に戻 ....
<判断基準>
なんだかんだでみんな
勝てる相手にしか
殴りかかったりはしない
そうでなかったあなたが
当たり前のような顔をしているから
おかげですべてがまぶしくなる。
....
孤独じゃないと 言い聞かせては
孤独でいようと 必死だったよ
いつかどこかで 出会いなおそうと
思えるくらいには 時が過ぎたよ
・
荒れ果てた町の 荒れ朽ちた部屋は
一人分だけの ....
<護身術>
身欠けて身欠けてすり抜けた
怪我したときほど笑ってた。
<懇願>
漠然と死ね
私が記憶しないように。
<利口化の世代>
根性 ....
<僕らの本当の誕生日>
はるか年上の 僕の友達へ
敬語を使うなと言って 跳ねるように歩く
話したくもないという戦争の話を
僕にだけは 話してくれた
家出した僕を その日の夜に
君が ....
<矛盾>
あなたを殺してしまいたい
でも
幸せにもなってほしいよ。
<矛盾なき矛盾>
本当に大切なものが
なすすべもなく消え去った時
もう残りの人生が余生でしかないと ....
■僕らが首を吊る理由■
産まれ落ちてからしばらくして
自分の体を初めて顧みた時
最初に気付いたのは
自分の手のあまりの小ささだった
どうしていいか分からないまま
少しずつ何かをする ....
<誘い>
どうか、誘ってください
真に受けたりはしないから。
<未練>
あなたのためなら
人形になってもよかった
人形くらいしか
あなたのような人のそばにはいられな ....
決まった道を 決まったように帰る
いなくてもいい自分
ならば 通らなくてもいい道
同じドアを今日も開ける
帰らなくてもいい家
ならば 置き去りの孤独
明日は何かいいことがあると ....
<二度目の初恋>
もっと 諦めることが
上手になったと思っていたよ
初めて好きになった人を 好きすぎて傷つけた日々
あんな思いをさせることは 二度とないと思っていた
もっと大人に ....
抜けた髪を拾い集めて
飲み干せもしないグラスを舐めている
あんなに昔好きだったスツールも
今は
あんなに昔好きだった本の墓場
指先であばらをなぞる
骨がある
皮が包む
あん ....
本当が聞きたい あるものなら今ここで
僕の有限と君の有限の間で 不滅があると信じた
ずっと笑って指差して来たものを 君とだったから信じた
いつかは土に帰る
無かったことになる
五十年 ....
<さよならのあと>
さよならと言えないでいるのは
さよならが辛いからではなくて
さよならのあと私ひとりで
さよならより狂おしいものが降りそそいできた時
それは必ず降りそそいでくるのですが
....
最近の子供は、外で遊ばない。
だからだめなのだ。
体も、心も、社会性も育たない。
家の中で、しょっちゅうゲームとSNS。
昔はこうじゃなかった。
最近の子供は、まったくだめだ。
■
....
SNSでつながろう。
オンラインゲームで仲間と一緒に。
ほんのつぶやきをリアルタイムで受け止めて、意味のある言葉を返そうよ。
江流のような言葉はとめどなく流れ、これが本当のライン川(寒)。
だ ....
<猶予>
今はまだ
そうこうしているうちに
未来も腐る。
<接触>
危ないですよ
始まってしまう。
<残照>
消えてしまうから
惜しまれるの ....
つまづく者を 見守る者は
つまづくことで何かを 掴んで来た者たちだ
つまづかないよう 見守る者は
つまづく度に何かを 失って来た者たちだ
石造りの壁に つながれたなら
不貞腐れてる間に ....
<死の手>
足の先から順に触れてください
のどを最後にして欲しいから
最後に呼びたい名前が
あるものですから
あなたもそうで
あるように
あなたもそうで
ありますように。
....
<イーゼル・ベーカリ>
イーゼルを看板代わりにした
街角のベーカリは通勤路
本日のメニューと季節限定
チョークは今日も鮮やかで
意外と個性の出るもので
あの人と彼女と彼と彼
....
初めてのことを たくさん教えてくれたね
飽きっぽいのかなと思ったら 好きなものが多いだけだった
あんなに高いアンテナを 初めて見た
手に余るものを 大切にしようとして
ぽろぽろ指の隙間から ....
<怖い人>
急によそよそしくしてごめんなさい
とても不安になってのではありませんか
何かしたっけと悲しそうな顔をさせて
とてもひどい人だと思われてはいませんか
私はあなたが怖い
あなた ....
ちょうど自分の脳を握りつぶせないような
小ささと か弱さ
まるで自分の心臓には届かないような
もどかしさと 無情さ
おそらく
そう簡単に自分ひとりでは
終われないように
造られて ....
れんがの家を覚えていますか
東の壁にはドアがあり
南の壁には窓があり
西の壁には物を置き
北の壁ではあなたが待つ
ドアを開けて壁をつたい
一度右へ曲がったら
虹のような形の窓の ....
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