散文(批評随筆小説等)
坂下さん/MOJO
 
振ってくる。嫌だ。五十を過ぎて天涯孤独なんて悲しい。ぼくは自分の将来を案じ、坂下さんのようには決してなるまい、思っていた。
 カローラバンは東金インターチェンジから一般道に降りた。一般道といっても高速道路と同じ道幅があり、走っている車も少ない。この辺りは有名な「ネズミ捕り」ポイントで、ぼくは免許を取ってすぐに、九十九里浜へ魚釣りに行く途中「三十キロオーバー」で捕まった。
 制限速度を守りながら、カローラバンは京葉ホームセンターに向かう。そのせいか、坂下さんの機嫌はよい。いつもは「おれはお人よしだから、免許取立てが運転する車に乗ってやっている」などと嫌味を言うが、今日は暢気に鼻歌など歌っている。
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