自由詩
杞憂/木屋 亞万
 
最初は誰もがただの雨だと思った
それは空の破片だった
乾いてひび割れて
ぱらぱらと空が
降ってきたのだ

空のすべてが落ちてくるかもしれない
どうやって己を守ろうか
頑丈の建物を作った男がいた
海に潜る船を作った老人もいた
彼らは誰にも空の異変を教えなかった

ある女は木の根っこの中へ潜った
女は空が降ってくると
親しいものに告げたが
誰もそのことを信じなかった
空はぱらぱらと青く降り注いでいるのに
今にも崩れようとしているのに

女は親しい人々のことを心配した
自分の命がなくなることよりも
ずっとつよく憂いた
私ひとりが助かっても仕方ないとすら思った
女は空に祈った

両手を合わせ
時にぎゅっと握りしめ
終いには頭を地面に擦り付けた
髪の毛を剃り
食事を絶った
できるかぎりの祈りを捧げた

今のところ
空は落ちてきてはいない

だが雷が響くたび
空が割れていくように思えて
私もその女を真似て
そっと空に祈るのである
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