古典詩ほうらむ(第二段)/ぽえむ君
今は昔、をとこありけり。
いとあやしき箱の詩歌の会にしげく通ふ。
投げ打ちたる文、すなはち返し給う局ありけり。
誰にか会はむと入りしかども、いらへなかり
ければ、つれづれなることを語るうちに、女、
入り給ふ。
大人なりければ、おくゆかしとて女の歌を
見やれば、いみじふかたき歌なり。
つきなしと思ゆるうちに、ほかより人入り来て、
今めくことににぎははしければせむかたなし
とて放つ。
山里は人も心も隔てらむ
虫の音響く一人寂しき
と詠みて寝ぬ。
(現代語訳)
今では昔の話になっしまいましたが、男がいました。
とても不思議な箱(パ
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