古典詩ほうらむ(第三段)/ぽえむ君
今は昔、をとこありけり。
まめにあやしき箱の詩歌の会に投げ入る。
よき歌には数を賜るも、をとこまれなり。
せむかたなしとて時うつるなか、いとになき歌を
思ひ浮かべり。すなわち投げ入れて数を待つも
答へなし。
さるほどに、なかなかなりと詞ばかり賜り、さらに
もどかし、むつかしとて、会、ことようなり。
会の主に申すも、ふたつ車にて旅しければ、すべなし。
いも寝られず、かなしくおぼえければ、
よき歌と思ひて走るわが心
いづこともなく旅に出づなり
と詠みて、家にこもれり。
(現代語訳)
今では昔の話になっしまいましたが、男がいました
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