小詩集【シンメトリー・パンドラ】/千波 一也
 



一、ハッピー・バースデー

たとえば今日が
誰かの命日かも知れなくても
生まれたあなたに
おめでとう

そうして
またひとつ
わたしは欠ける


たとえば今日は
誰かの鍵が消えるかも知れない
誰かの扉が崩れるかも知れない

すべてが見えてしまったら
正気ではいられない

それゆえに
わたしたちは
残されたものとして
同じように
誰かを
置き去りにする

そう、
わたしたちは
みごとに狂うひとつの歯車


たとえば今日で
誰かの城が滅び去ろうと
誰かの空が燃え尽きようと
キャンドルはいつも揺れて減
[次のページ]
   グループ"【こころみ詩集】"
   Point(22)