小詩集【シンメトリー・パンドラ】/千波 一也
て減る
莫大な時間は不足と似ているね
不幸というものをうたえるほどに
わたしはまだ
幸福を数えていないから
生まれたあなたに
おめでとう
かぎりを知って
祝福をしよう
二、水の瞳
まねごとはおやめなさい、と
たしなめられている
水の向こうにいる人に
あるいは
近くて遠い
水のおもてに
わたしのゆびは
冷ややかに
染まる
月明かりは物言わず
それゆえ夜は
何もかもが許されるはずだと
たたずんで
わたしとよく似たあなた
触れられず
聴けもせず
わたしはまったく及ばない
けれど
一枚の水の隔たりに
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