小詩集【常夜灯】/千波 一也
宿るものは
名を持たない
宿らせるものもまた
名を持たない
互い違いに
突き立て合う牙ならば
いずれも等しく
慈しみであり
哀れみである
朝にはむく毛
昼には四肢
夜には眼
司るものは
名を呼ばない
呼ばせているものが
あるならば
それは
証だ
いわれのないものごとを
脱ぎ捨てようとする
ならいの
正しさの
証だ
六、 包囲網
わたしの不幸は
加護にある
わたしの幸も
加護にある
それを
知らずにいるわたしと
知っているわたしと
どちらでも
選べるというのに
わたし
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