少年と鳩/恋月 ぴの
 
可愛いやつと一羽のレース鳩を胸に抱いた
彼の眼差しは恐ろしいほどに優しかった
自分の弱いところを見ているようで
彼と一緒にいるのが嫌だった
彼と友だちだと誰にも思われたくなかった
それでも誘われるまま
彼の家の屋根に二人してよじ登り
空の彼方より舞い戻ってくる鳩の姿を
いつまでも捜し求めていた
吃音混じりの会話が鬱陶しかった
真っ白い雲に小さな黒いシミが出来た
どんどんと大きさを増す黒いシミは
やがて翼をせわしなく動かす鳩になった
鳩舎に入るのが惜しいかのように
家の周りをいつまでもぐるぐる回っていた
彼は両手を振りながら歓声をあげている
そんな彼の笑顔は途方も無く
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