祭祀クーラスとエインスベル(九)/朧月夜
 
「そう簡単に逃げおおせられるものかな? エインスベル」
祭祀クーラスは、マッチャ・フー・ガイリアの呪文を使った。
エインスベルの全身が光の縄で縛られ、捕縛されてしまう。
しかし、エインスベルの表情には余裕があった。

通常、呪文というのは、その名前を唱えるだけでは発動しない。
長々しい呪文を、身振りを交えて唱えなければいけないのである。
しかし、エインスベルの持っている虹の魔法石は、
その制約を取り払うもののようだった。

頭のなかで念じるだけで、魔法が発動する。エインスベルは、
祭祀クーラスの呪力を軽減させる魔法を、心のなかで念じた。
途端、祭祀クーラスの手元で光がはじける。

マッチャ・フー・ガイリアは解除され、エインスベルは立ち上がった。
(今は虹の魔法石の力に頼ろう。いつか、それが自分を滅ぼすとしても……)
エインスベルがゆらりと立ち上がった姿に、祭祀クーラスは慄然とした。
   グループ"クールラントの詩"
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