アイソニアの騎士とエランドル(十四)/朧月夜
「ドラゴンが自然な姿? どういうことだ?」アイソニアの騎士が尋ねる。
「お前は考えてみたことがないか? 人はなぜ争い、殺し合いをするのかと。
人は愛する者のために生き、時には家族のために犠牲を強いることを厭わない。
そこに、人間の本質というものがある。定められた争いだ」
「しかし」──と、エランドルは言葉を継ぐ。「これらの者が、
すべて一体だったとしたらどうか? ドラゴンは……それも、
わたしたち魔導士(ウィザム)が作り出したものだが、
この自然体を体現している存在なのだ。彼らは劣っているのではない」
「俺は、言語崩壊後千年の歴史には詳しくない。しかし、それ以前は平和な世の中だったと、
聞いている。お前たち魔導士(ウィザム)は、世界に争いを作り出した。
この世界の悪の元凶だ。そして、お前が親玉なのであろう?」
「なら、なぜわたしが生きている? 悪とは淘汰されるものだ。
わたしが真に悪なる存在であれば、とうの昔に死んでいたことだろう。しかし、
わたしは生きているのだ。世界を自然へと導くために」蒼ざめた表情でエランドルが言う。
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