アイソニアの騎士とエランドル(十五)/朧月夜
「今さら救世主の顔など、お前には似合わないぞ?
お前は、ドラゴンどもにエイミノアを殺させた。一人の殺人者だ。
そして、多くの人間の命を奪ってきたのだ。そうであろう?」
「そうだ。わたしは救世主などではない」と、エランドル。
「しかし、そこにいる盗賊は気づいているようだ」
──エランドルは、ヨランを指さして言う。
「例え、この世界に人間が一人しかいなくなったとしても、
それは人間だと」……。エランドルはこの時、深い溜息をついた。
「エランドル様。あなたの悲しみはよく分かる所存です……」
「ヨラン、黙っていろ。俺は、この詭弁家の舌を引き抜いてくれる!」
「大層な威勢だ! しかし、己の力が世界を滅ぼすと知ったなら、どうだ?」
ヨランは息のを呑む。アイソニアの騎士は、依然としてエランドルを睨みつけている。
「持って行くが良い、虹の魔法石を。そして、エインスベルを救え。
人が人であるために、彼女は戦うことだろう。お前のような臆病者とは違って」
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