【批評祭参加作品】いい仕事の核/深水遊脚
 
っただろうと思う。いじけていないゴーシュは好きである。楽団の中の落ちこぼれであるゴーシュに対する憐憫はそこにはない。侮蔑に耐えて健気に音を紡ぐという、美化された、砂糖を入れすぎて台無しになったコーヒーのような物語とは無縁である。ゴーシュのサディストっぷりは辛辣この上ない。動物たちもそれぞれ好き勝手なことを言っている。それぞれの勝手が突き抜けてぶつかって、そんななかで磨かれたゴーシュの音が最終的に聴衆を魅了してしまう。もし弟子が師匠の希望の通りに1万人に5人の素質と力を磨き続け持ち続けるならば、しかも寂しさ、侮蔑、窮乏を受け入れてそれらを素晴らしい音に変えるのであれば、これくらいの太さが間違いなく必
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   グループ"第5回批評祭参加作品"
   Point(4)