雑談スレッド3[121]
01/31 21:39
佐々宝砂

と、マンガの話ばかりではなんなので、スウィフトの話など(ときに、私が前から読みたいのにまだ読めてないスウィフトの本は『奴婢訓』。どこかで読めないでしょうか)。

うちにある岩波書店ユートピア旅行記叢書版『ガリヴァー旅行記』によれば、奥主さんの指摘する「貧民の子供は食用にしてしまえばよい」という文献は「アイルランドの貧民児の処理をめぐる私案」のことではないかと思います。いま手元にはないのですが、私も奥主さんと同じく岩波文庫版ガリヴァーのあとに載ってたバージョンを読みました。私もスウィフトのことについてそう詳しいわけではないのではっきりしたことは言えませんが、「アイルランドの貧民児・・・」は、そのままずばりのわかりやすい主張として「子どもを食っちまえ」という意味の文章ではなく、おそらく諷刺だろうなと思います。実際、それを書いて以後のスウィフトは、アイルランドの愛国主義者と呼ばれたそうです。当時の人たちもそのまま素直に読んだわけではなく、諷刺としての意味を汲み取ったのでしょう。スウィフト自身がどう考えて書いたか、アイルランドのどの層を援護しようと思って書いたか、それはわかりませんが、言葉通りの意図があったとしたら、いくらなんだって愛国主義者とは言われなかっただろうと思うのです。

スウィフトの本では「桶物語」がいちばんバカバカしくて面白くて好きです。ガリヴァーの厭世観にめげてしまうひとも、「桶物語」ならいけるかもしれません。もっともバカバカしさアレルギーを持つひとにはちょっと無理です。人を小馬鹿にしたような小説です。ところで「人を小馬鹿にしたような」というのは疵なんでしょうか、どうなんでしょうか。そこらへんは好みの問題じゃないかなと私は思います。

差別と文学の問題を考えるとき、私が思い出すのは、『誰だハックにいちゃもんつけるのは』といういまさら誰も憶えてないだろーな小説です。私も作者を憶えておりません。集英社コバルト海外シリーズから出ておりました。『ハックルベリ・フィンの冒険』を授業で使う学校があって、ハックには黒人差別的な要素があるからとその授業を黒人生徒がボイコットする話です。たったひとりだけ授業を受けた黒人生徒がいて、最後にその生徒が「ぼくはハックルベリフィンを読んだ。読んだから知っている。ハックはニグロという言葉を使うけれど差別的じゃない」というようなことを言います(記憶で書いてるので詳しくは違うかもしれません)。差別的だと言われていても、「読んでみる」「自分で確かめてみる」ということが、重要なことなのではないでしょうか。
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