しりとりの詩 2nd[230]
2006 05/19 01:53
小池房枝
私は
青いよりも灰色の海が好きです
遠く、鈍く、水銀色の海
曇った日
水平線はぴんと真っ直ぐで
直線を定規でひいたみたいですし
かなたの島影も
貼り絵のようです
そんな日に
そんな色の海に潜っていたとき
雨が降り始めました
リーフに囲まれて穏やかな水面に
幾つも幾つも雨の粒が
落ちてきました
数え切れないほどの雨粒を私たちは
海の上に
顔だけ出して
眺めていました
「もう、帰ろう」
そう思ったのに
私たちは陸に上がらなければならなかったのです
「もう、帰ろう」
そう思ったのですが
海が銀色をしているのは
水面だけでの話です
海の銀色のその下に帰りたかったのです