【petit企画の館】/蝶としゃぼん玉[543]
2017 09/05 00:04
ハァモニィベル



『九月四日。まるっと』

    原作 渚鳥 / 訳詩 ハァモニィベル

   
(注)本作は、渚鳥語の原典をハァモニィベル語に訳すシリーズ
      幻の第三弾!です。




この机の足下に私の工作用の材料がほとんど入ったカゴが一個ある。

それは一人の人間の訪れをいまも待っている

季節が違うものは押し入れの中に積んである
それは灯をともされるのを待っているローソクみたいに

カゴは外側をコーンパイプの質感を持った肌で覆われているが、内側は地味な布張りで
〈木〉が沢山描かれたその模様をみるたび、大人になった今でもときどき思う

木立の中には何か別の物が内包されているような気がする、と

床の敷物と、色もデザインも合わないせいで、大きめのナイロンのバッグで私はカゴを下からまるっと覆った

後ろ髪をひかれながら一本道をいちもくさんに奔ったときのような気持ち

バッグの模様は未だ美しい

荒んだ冬木立の、ありきたりで、埃っぽい街並みは
黒地に撒いたような灰色の木の葉が、ぜんぶ上を向いてプリントされている

冬木立の中には何があるのだろうか

木の葉は木全体の縮図だと、いつだったか、誰かに、習った気がする

灰色の木の葉がなんだか物分かり良いようにも見えたりした

離れ離れに寄り添う様な密度でみんな上を向いた
散り散りの木の葉たちが

仄かに冬の夜を待っている

   しゃらしゃらと、ぴったりひっそり

私の目にはそうも見えるし

まるっと覆ったバッグの中でも木の葉たちは
ろうそくの灯のように、やはりどっか浮き立っている








〔著作権料の配分は、ベル氏99.5%、渚鳥氏0.5%(材料原価別)です〕

尚、
原作は、>>542 を参照してください。

念の為こちらもご参照ください
 >>523

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