2017 01/21 14:08
ハァモニィベル
*(
>>353)
伝承文学である英国のバラッドには、しばしば
子どもを殺す母親
妹を殺す兄
などが、出てくる。
「愛情深い母親」 と 「家族を養う逞しい父親」を前提とする
「近代家族」は、西洋で18世紀頃に市民社会の成立とともに
誕生した。
と言われるように、
「家族」観というのは、時代によってかなり違う。
とはいえ、
現代は現代で、子殺し、親殺しのニュースは、けっこう目にする。
家族の実像は、いつの時代も《ミステリ>>なのであろう。
だが、近代以後、現代の方が、一層、ミステリと感じるのかも知れない。
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バラッドは、作者不詳の物語詩であり、もともとは、うたでもある。
吟遊詩人等に伴奏つきで謡われて、各地に伝わった。(最盛期は15世紀)
(東大で講義を始めたとき、バラッドを取り上げたハーンが、「耳なし芳一」に注目したのはうなづける)
印刷術の発達を受けた16世紀には、路上で歌いながら、印刷された歌詞と楽譜
が売れるようになる(バラッド作者というのも出てくる)が、これは、瓦版というか
当時はニュースの役割も果たしていた。
近代以前は、センセーショナルな話題が、伝承詩になって歌われたのに対して、
現代、シンガーソングライターが、殺伐とした事件を歌うことがないのは、
ニュース報道がそちらを担当しているからだろう。
江戸でも、事件は、すぐに歌舞伎などの演目になったが、
いまは、TVのドキュメントや再現ドラマで観ることになっている。
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アガサ・クリスティーのおかげか、ミステリーと言えば、マザー・グース、という連想が可能であるが、
マザー・グースの唄は、もとはバラッドであったりする。
その、たんたんとした物語詩ぶりや、ミステリぶりは、
(歴史文学)であるとか、(ミステリ詩の実験)であるとかを考えている
この場所では、
十分に見直される意味を持っている、と思います。
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