【petit企画の館】/蝶としゃぼん玉[205]
2016 10/06 18:18
ハァモニィベル

>>202 >>203


蛾兆さん 【作家の本棚】に第一冊め

 ☆ ジェーン・オースティン 『高慢と偏見』(あるいは、『プライドと偏見』)

の御寄贈、感謝いたします。


  ※ ※ ※

石村さんの対応コメントにも感謝いたします。
ご寄贈者が、その作品を照らしている角度もまた、興味深く、そこからまた作品を読みなおしたり、何かをふと新たに考えたりする契機が得られます。また、そこから派生する談論からも。



さて、

200年も前の、しかも英国の階級社会の、しかも日常を描いた小説の、
何を今さら読むのだろうか?そんな、「高慢と偏見」が200年滅びないからこそ、
この作品と作者の200年滅びない魅力を知らねばならない、とも言えるのでしょうし、
じつは、心ある人たちは、みなその魅力にずっと気付いて来たとも、言えるでしょう。


Jane Austen は写実の泰斗なり。平凡 に して 活躍せる文字を草して技神に入るの点に於て 、優に鬚眉の大家を凌ぐ。余云ふ 。 Austen を賞翫する能はざるものは遂に写実の妙味を解し能はざるものなりと。〔・・・〕這裏の消息に通ずるものはAusten の深さを知るべし。Austen の深さを知るものは平淡なる写実中に潜伏し得る深さを知るべし。 (夏目漱石 『文学論』)

*

〔漱石の前任者であった小泉八雲の、東京帝大の英文学史の講義で曰く〕文学的教養が十分でないと彼女の小説の並はずれた長所を理解することはできない。ありふれた品のない人たちには理解が届かないのである。表面的にはともかく、その内面の意味の理解は。 ( 『ラ フ カ デ ィ オ ・ハ ーン著作集』 (第12巻)野中涼 ・野中恵子訳/恒文社 )



オースティンの時代には、ゴシックノベル(お城が出てくる怪奇もの)と、センチメンタルノベルが人気があったらしいのですが、オースティン自身はそれを揶揄する風刺的パロディ作品 『ノーサンガー・アビー』を書いており、当時、良識あるヒト達から、詩や随想・シェイクスピアなどよりも見下されていた小説にたいして、積極的な擁護の見解を書いているそうです。そこにも又、ユーモアと風刺に富んだオースティンの精神が感じられます。

ただのエンターテインメントではない、深く豊かな、人間模様の描かれた経験の宝庫であり、
そうありたいもの。

そんな小説の魅力の原点について、想いました。



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