【petit企画の館】/蝶としゃぼん玉[10]
2016 08/01 09:02
るるりら

【百合】


昨夜の薪が
まだ ほんのわづか ちろちろと してゐる
寝る前に見た 夜光虫のまたたきと
星々とのまたたきとの
違いがわからなくなくなつてしまつた
ほんとうには 生き物と星に違うところは無いのではないのではないかと
感じたのは 夢だつたろうか現実だつたろうか
気がつくと 

あさやけいろした
しんせんな波が 
たぷんと 
岸に届くと同時に
いちばん 早起きのセミが 歌いはじめ
鳥の囁声《つぶやきごゑ》はそこはかと、
覚めた波の揺動《ゆさぶり》とともに
まだひそかな梢《こずゑ》で前奏曲を始めてゐる

あつという間に 登った太陽は、やつぱり 赤かつた
わたしは知つた
真つ赤な太陽とは、 一日一日の始末を空を見てきた人々の言葉だつたと 
なんという くれなゐだろう
月も出ていて ユリの鱗茎のように 白い
なんという 対比だろう こころが躍り
みなで 沖に泳ぎはじめた


さあ どこまでも 限界まで 今日一日は 泳いでいこう
この島のすみずみを 泳いでいこう
どこまでもどこまでも いけそうな気がする

途中ですこし陸に あがつた
巨大な地層が露わになつてゐる
恐竜もきっと岸壁に呑み込まれてゐるだろう地層の下に
立ち
燕の子らのように 大きな口をあけ、上を見上げると 雫が落ちてくる
まみず

無人島の真水
潮のにほゐのない 無の味が 
命ある わたしの喉を ひんやり通ると
わたしの命は ほほゑむ
たった数滴で さらにどこまでも 泳いでいけると確信した

わたしたちは、遭難者だ
だれも助けてはくれない
かならず 夕刻には薪のところへ帰らなければいけない
そう思ったときには夕刻に もう近づいてゐた

仲間の中にへたる者も でてきた
簡単な筏も作つてはゐたが みながへたってきたので木材を
泳げなくなつた者のために筏にくくりつけた 
いさましい者は先頭で みなを運ぼうとして
身体をそりかえしては もぐるのを繰り返すが、  
先に進むことに気をとられ次第に方向がずれてゐた

三日月が見えた 
遠く薪が見えた
百合の鱗茎のように僕らは 一塊となつて
軌道を修正しあい凍ゑながら
炎へと 向かつた




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新スレッド開設、おめでとうございます。
旧スレッドでの課題を書きました。
予定の期日を一日遅れましたが、
昨夜が期日だった『百合』を提出します。ついでに
おなじく昨夜が期日だった 蛾兆さんの提案しておられた『炎』の要素も いれました。

http://po-m.com/forum/thres.php?did=316267&did2=881&mode=pop
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