【期間限定~9月15日】23歳以上の人の『夏休み読書感想文』(原稿用紙3枚)[2]
2015 08/05 14:48
ふるる

『カラマーゾフの兄弟』ドストエフスキー著 原 卓也訳 新潮文庫

過去何度か挑戦しては挫折してきたカラマーゾフの兄弟を、読破しました。原 卓也訳が私にはよかったです。
若い頃に読んだ時は、三兄弟の誰も素敵と思えなかったけど、今読むと、「若さゆえの色々は面白い」と思います。(28,24,20歳の三兄弟)
だいたいの登場人物にダメな部分があって、ダメ人間見本市みたいなところがあるけど、作者が人間好きなのか、何か憎めないです。
兄弟のダメ父フョードルでさえ、自虐的にピエロを演じる性格、でも寂しがり屋のところもあって、しょうがないおじさんという印象。

お話は、真面目にキリスト教や社会問題を語る部分と色恋沙汰が交互にやってきて、色恋沙汰の部分はほんと喜劇です。
そんな中、あっちこっちから話を聞いてだの伝言頼むだの救ってくれだの言われる三男アリョーシャ。
誰からも愛される修道院見習い僧のアリョーシャですが、父親はお金にずるくて女好き、長男は父親殺しの容疑で逮捕、次男はせん妄症で
息も絶え絶え、尊敬していた長老は亡くなるし、兄さんの喧嘩のとばっちりで子供には噛まれるし、彼女は残酷大好き。気の毒すぎて笑えます。
というわけで、楽しく読めました。

テーマが色々あって読む人によって違うと思うけれど、私が心に残ったのは「幼児虐待、許せん!」というドストエフスキーの心の叫び。
三兄弟のみんなが、子供には愛情をもってて、「ひどい目にあってる子どもをなんとかしなくては」と思ってる。(イワンがコレクション
した幼児虐待情報の酷さがものすごい)
別の親子のすごく愛情にあふれたやりとりのシーンもあるし、子供が犯罪者になるのは、親がちゃんとしないからだ、と弁護士が熱弁を
ふるってるところもあります。
なので、未完と言われるこの小説、その先は三兄弟が何らかの形で子供を救う…という話も入ってたかもなあ、と思います。

無人島に持って行く本をひとつ選べ、と言われたら、これにしたら、面白いところだけ読んで面白がってもいいし、真面目なところを読んで考え込んでもいいし、書かれてない続きを妄想してもいいし、色んな角度から、何度でも楽しめてお得だと思います。


私が好きなシーンは、

超クールなニヒリスト次男イワンが弟アリョーシャに、「小さい頃お前はさくらんぼのジャムが大好きだったじゃないか?」と言うところ。「兄さんはそんなことをおぼえてるんですか?」「何でもおぼえてるさ」だって。
ツンツンしてるけど、やっぱり弟好きみたい。

直情型の長男ドミートリイが、酔っ払いの百姓を起こそうとして悪戦苦闘するところ。この辺りの一連の行動、このお兄さんは本当に28歳なのか。これほどかっこ悪いシーンて滅多にない。まあ、いい人なんだろうけど。

三男アリョーシャが、ゾシマ長老が夢に出てきた後で悟りを開き(?)その時にみた美しい星空の描写。アリョーシャがあわあわしてるシーンは全部好きなんですが、真面目に苦悩してるところもよいですね。
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