○現代詩フォーラム短歌部○[220]
2005 05/09 20:41
本木はじめ

たとえばきみ、ガサッと落ち葉を、、、、本木です。


そんなこんなで、忘れてました。


四月度おすすめながしそうめん短歌っ!!!




[528]ふるるさん

           静    止 
マグリット 空中で        している ああ空がこんなに青いなんて!!

発想の勝利。マグリットのクールさを巧く表現してあり、尚且つ
「青いなんて!!」という感情的な台詞の組み合わせてあるところが素敵です。


[551]小池房枝さん
透明な小鳥は空へ木蓮の白き遺骸はやがて大地に

美しい歌です。透明な小鳥の誰にも気付かれることなく空へ溶け込んでゆく光景。
遺骸となり果てても尚、白い木蓮の大地への還元されるさま。
なによりもそのリズムに惹き込まれます。


[562]ふるるさん
借りてきた本のページが千切れてて三角形の行方を想う

とても読みたい本を借りてきたけれど、読み進む内にページの端が三角形に失われていた。
関心はその千切れた三角形の行方へと徐々に変わってゆく。それは前にこの本を借りて行った人の
部屋にひっそりと落ちているのだろうか。それともまた他の誰かが、とても大切なメッセージを伝えるため、
メモ代わりに急いで切り取ったものなのか。などなど。
さまざまな語られることのない可能性が秘められていて好きです。
あと、千と三の並びも素敵です。


[567]バカ男さん
ガソリンスタンドで働く父のために埠頭で釣りをする母

爆笑。しつつ、またしてもなんだかさみしい気分になった歌でした。
バカ男さん特有のセンチメンタルブラックユーモアとでも呼びたくなるセンス。
埠頭でエプロン姿のお母さんが、夕陽を背景に釣りをしている姿が鮮烈に浮かびます。
しびれます。


[569]ふるるさん
黄緑の春の泥沼ずぶずぶと入っていくよ乙女がひとり

これは何かの比喩としても捉えることができそうですが、
個人的には、読んで字のごとく、そのままの情景を思い描いては美しいと感じています。


[604]ふるるさん
「今日は無理」なんじゃあその言い方はイエスかノーかはっきりゆうこりん

奇跡的。この組み合わせと投げ方と微妙さは空から象が降ってきたのかと思うくらいガツンとキました。
この歌を生み出していただけたことに感謝。(いや、別に小倉優子のファンとかではないです。一応w)
新鮮です。


[636]蒼木りんさん
その顔が見たかっただけそのために綱渡りする世間の眉間

最後の「眉間」へと集約されてゆくこの歌。
「世間」との音の組み合わせも良くて、世間の眉間だけで、
そこに皺が寄っていることを十分に感じ取れる
巧い歌だと思います。


[670]ふるるさん
若葉たちうたた寝してる夏の午後虹のしぶきを浴びて目覚めろ

「虹のしぶき」、の新鮮さ。「浴びて目覚めろ」の口調。
いいです。


[672]ヤギさん
じゃあ切るよ またね バイバイ それじゃあね 電話切れないっていう歳かよ

5・7・5・7・7を会話体でうまく切り刻んであるところが魅力です。
前半の歯切れの良いリズムと後半の少しあきれたような台詞のリズムが、対照的で好きです。


[680]ふるるさん
遠泳は笑いとまらず苦労した帽子の頭がぴょこぴょこぴょこぴょこ

巧い。遠くへと泳いでゆく黄色い帽子(なぜかイメージ。)が、
浮いたり沈んだりしている光景がありありと浮かんできます。


[682]ふるるさん
受話器から液体こぼれ落ちるままあなたの声で部屋がたぷたぷ

これまた巧い。「あなた」の声(または存在)を会話のなんらかの瞬間、液体と感知してしまったのでしょうか。
いわずもがな、このあと「わたし」は溺れることになるのでしょう。もう溺れているのかも。


[727]ふるるさん
東シナで眠る二千七百四十名模型「戦艦 大和」

この漢字の迫力、「眠る」の穏やかさとが、「戦艦 大和」のどこか儚くも勇敢な巨体と巧くだぶらせてあり、
一気に惹き込まれました。日本人であること、をいろんな意味で痛感させられました。


[750]最果タヒさん
きみの影の中で咲いて散りたいと言ったコスモスぼくらが踏んだ

錯綜。「きみの影の中で咲いて散りたい」と言ったのはコスモスは、「ぼくら」へ向かって言ったのでしょうか。
ミクロコスモス、マクロコスモスじゃないけど、「ぼくら」への宇宙の羨望。
コスモス(宇宙)がぼくらの中で咲いて散りたいと言った。
外に宇宙があるように、ぼくらの中、もしくは「ぼくら」という名の宇宙がある。
うまく言い表せませんが、等価値としてのふたつの宇宙があるのだという感じを受けました。
素敵です。


[760]小池房枝さん
かば、らいおん、きりん見たぞう見たきりん忘れてしまうま記憶しろくま

勢い。そして技巧。リズム。すべて素敵です。


[764]ふるるさん
誰にもね鬼は住んでると言うけれど鬼以外は誰が住むのん?

やっぱり巧い。この最後の「のん?」が凄く効果的で、現にこんな台詞がどこかで言われていてもおかしくはないくらい
リアリティがあり、説得力があります。


[767]ふるるさん
海岸で砂のお城を作ります雲のお城にとどけてっぺん

そして、最後もふるるさん。なんだか四月度はふるるさんの短歌がほとんどを占めてしまいましたw
なかでも、この一首は、凄く好きです。一見、とてもファンタジック。でもよく考えると、新たなバベルの塔へ至るまでの
伏線的な歌とも読めたりして。こんな無邪気な遊び心から、ぼくたちは言葉を分かたれる要因を作ってしまったのかもしれません。
と、いろんな読み方ができるところも凄く素敵です!
ふるるさんには、是非もっと短歌投稿していただきたいです。
あと、確かに最近、バカ男さんを見かけない。新作読みたいです。



以上、四月度おすすめながしそうめん短歌でした!



#おそくなりましたが部長、引き続きよろしくです!
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