【期間限定~9月15日】23歳以上の人の『夏休み読書感想文』(原稿用紙3枚)[8]
2014 08/19 15:38
ふるる

戸田山和久著『哲学入門』ちくま新書

この本の著者は、意味、自己、目的、自由、道徳などの「ありそでなさそでやっぱりあるもの」を、「精神」と「物質」に分けないで「物質世界の言葉」だけで説明しようという試みをしています。
そのためには、「意味」とは何か「情報」とは何か「目的」とは何かをすべて生物や物質の言葉だけで説明しないといけない。そんなことできるの?と思ったけれども、ちゃんとできています。多分。(私のおつむでは分からない部分も多し)
その中で、何故我々が「間違える」のか、ということも分かってきます。間違える能力は、目的手段推論のためにちゃんと役に立っているのでした。

それも面白かったんですが、私がへえ〜と思ったのは、「道徳的概念のコアには自由意志の概念がある」というもの。

つまり、助ける、寄付する、許す、賞賛する、逆を言えば助けない、寄付しない、許さない、賞賛しない、という行為の根底には、「それが自由意志でなされたかどうか」ということが関わっているのです。自分の意志でした悪いことには罰が与えられるけど、心神喪失状態だったら無罪になったり。「自業自得」という言葉もあります。

人間が信じてて、尊重している「自由意志」っていうのは、欲望にしたがってやりたいことをやるってことではなく(それは自由というより、欲望に支配されている状態で、社会的地位や生命を損ないかねない)自分をうまくコントロールして過去から学んで良い道を選択できる、っていうことらしい。

この「自由意志=自己コントロール能力」を人間はすごく大事に思ってるみたいだけど、どうしてだろう…?これへの答えも書いてあって「自由意志でやったかどうか」という問いは、自己コントローラーという特別な道具(要するに目的手段推論能力)を使ってお前は何をするのか?という問いで。その道具は文化を作ったり協力したりするためのもので、悪いことしてそれをぶち壊すためではない、ということみたい。
あと、「責任を取る」という行為は「自己コントロール能力を高める」とも書いてあった。

でも、この「自己コントロールがうまくできている」というのは、誰が決めるの…?
自分?周りの人?「うまくできている」と思ってる人は自分で感じているだろうけど、それを決定づけるのはやはり他人からの評価か。
ただこの「コントロールうまくいってる」状態の基準が、現代は結構厳しめで、ついていけないと感じる人も多いでしょう。
たとえば、女性が仕事も家庭もおしゃれも全部できてて、という幻想があって、それが「うまくできてる人」ってされると、困る。一つ良い策を考えることができて、そっちに向かっているんなら「うまくできてる人」って言っていいと思うんだ。

その他、「なぜ人生が無意味に思えるのか」に対する答えが、すごくいい感じに書かれていて、よかったです。
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