2014 11/11 22:54
平瀬たかのり
『曽根崎心中』(1978)
<監督=増村保造:脚本=白坂依志夫、増村保造>
傷に感じたのは、お初の大阪三十三か所巡りがあまりにあっさり描かれているところと、仇役との出会いが偶然過ぎるところ。この二点のみ。
後者はおそらく近松の原作の傷でもある……ってスゴイこと書いてるな(笑)。原作読んだことも浄瑠璃観たこともないくせに(汗)
心中に至る男女の情念が、スピード感溢れる展開、過剰気味の演技(おそらく人形浄瑠璃のセリフ回しを意識したもの)の中で見事に描かれます。
宇崎竜童の演技は正直上手いとは言えないんだけど(あるいは監督の指示によるものか)徳兵衛の純情冒頓を表現するには欠かせないものとなって、次第に気にならなくなっていきます。
そしてお初、梶芽衣子の妖艶可憐な美しさ。もうワタシごときが何をどう書いてもその美しさからは逆に遠ざかっていく。
梶芽衣子という希代の女優が昭和の世に現れることを知っていた江戸の世の近松が、彼女の為にこの物語を書きあげた…そんなトンデモ発想をさせるほどの演技、艶技。
心中はもちろん美化してはならないことです。でもこの物語、映画は死に向かっているのに「そこから立ち上がろう」とする男女を描いたストーリーにもなっているように思います。だからこそこの作品は「お初、徳兵衛道行きの段」は、永遠に遺り続けていくのではないでしょうか。
ああ、いくら言葉を尽くしても届かない。
私情に残る珠玉の一本、そして梶芽衣子様の美しさ。