映画館ポエム座[39]
2004 12/28 13:21
藤崎 褥

『スタンド・バイ・ミー』

僕が小学生だった頃にはじめてみた実写の映画である。
親戚の映画好きの叔母さんが我が家にくれたビデオがきっかけで、僕はそのケースにある『あの時のような友だちを二度と持つことはできない。誰だって…。』というフレーズに興味を抱き、慣れないビデオ操作を乗り越え、ようやく見ることができたのである。

ストーリーは少年たちが電車事故の被害者の遺体を捜しに行くというストーリーで、原作者はホラー作家としも有名なスティーヴン・キングで、グリーンマイルなどの作品でも有名な方である。
スタンドバイミーも実は恐怖の四季という四本の中編小説の一つで、やはりホラーなのだろうが、綺麗に青春物語と中和されており、はじめてみた小学生の頃にも、それほど恐怖を感じた記憶というものはなかった。

いかにもアメリカという感じのする世界観、そして同世代の主人公たち。
僕はストーリーそっちのけで、登場人物たちの口から出てくる言葉を聴いていた。
実際、最後に目的を達成する時点で、僕は「なんで死体が出てきたのだろう…」と思っていたほどであった。
この映画はきっと、抽象的に、適当に早送りして出てきた画面からでも楽しめると思う。
まさに小学校の頃の僕はそのような楽しみ方をしていたと思う。

ストーリーをじっくりとかみ締める事ができたのは、恐らく中学生以降だと思う。
それ以後も定期的にこのビデオは見ており、やがてサウンドトラック集、DVD、原作…と、我が家にスタンドバイミーが増えていったのだが、今に至るまでその感動や新鮮さは全く損なわれる事なく…それどころか、新たな感動を増しつつ、僕の部屋に置いてある。

この映画は見るごとに、そしてその世代ごとに色を変えていくものだと思う。
主人公は少年たちであり、そしてその物語の語り手は大人になった少年のひとりである。
そして、個性的な登場人物は各世代が揃っている。
子供たち、青年、そして親世代…。
この映画に描かれている人物たちは、誰も一様にどこにでもいる生々しい人間の素顔である。
彼らの一人一人が、見る側に語りかけてくるのである。
少年たちと同様に大人や青年たちの理不尽さに奥歯をかみ締めた時、やがて青年たちの持つ心の中のモヤモヤした感情が見えてきた時、そして…恐らくこれから見えてくるであろう、大人から見た子供たちの姿、そして社会の現実…。

思えば、僕はこの映画を通して、自分の成長を見つめて来た気がする。

あの日、自分と全く同じ目線で社会を見ていた少年たちの姿を、やがて主人公の親の年齢に近づいていく僕は、どういう感想を持って見ることができるのだろうか。

僕には、寂しさも感じつつ、その日が楽しみでならない。
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