2005 11/03 00:17
田代深子
車で走り猫の死体を見つけ車の窓拭き用タオルに巻いて抱いて道路脇によけた
まだ温かく柔らかかったし比較的小さな猫だったので違和感もなく
ただ まだ生きてるだろうか と思ったりもしたのだが
頭の下にはかなりの血が流れ出て溜まっていて目も開いたままだったので
ああ もう命はないのだな とすぐにわかり手を合わせた
車はよけていってくれた まぁよけるだろう
頭のどこで何を切り替えたのか自分でもわからないが落ち着いて首輪を調べていた
飼い主の連絡先はないか ピンクの可愛らしい首輪にそれらしいものはない
残念だが民家の前に放置するわけにもいかず携帯電話で110番を呼び出した
初めてのことだ なかなか出ない 警察は そりゃ忙しいのだろうが
これじゃ緊急のときはどうなるのか いや猫の死体で電話をする者がいるのだから
仕方はないのか 申し訳なくもなる やっとつながっての対応はすこぶるよい
家に帰りつくと ずっと一緒にいた彼が家に入る前に塩をかけてくれた
背中にも 掌にも わたしは車内にも塩を軽くまいた 死穢は汚濁ではない
くらく底知れぬ穴である 彼はわたしが死に吸い寄せられるのを怖れて
いたのかもしれない だいじょうぶ と言ってあげればよかった
猫はどうされたのか わかりはしないし知りたいとは思わないが
飼い主は姿が消えて悲しんでいるだろう 残念なことは多い 何であっても
死んで初めて触れたわたしに せめてもの報いをどうぞ
わたしが何者も死なすことのないよう どうか