雑談スレッド6軒目[263]
2005 05/31 21:50
「ま」の字

 貴乃花が死んだ。大鵬が親方を引退してすぐに。なんということだろう。

 私は、ミーハーと呼ばれることを嫌う、ある意味見栄っ張りな男である。実際世のミーハー趣味の対象を好きになった記憶はない(あくまで記憶だが)。だがそんな俺でも貴乃花ファンであったことだけは別格だったなあ、と思い返す昨日から今日であった。

 人物の力量というものは、同時代を生きていてはかえって分からないことがある。というのは年来の持論だが。テレビが流す貴乃花の取組を見て、改めて凄い力士だと思った。「かばい手」という言葉を流行らせ、「まげ相撲」なる言葉を生んだあの相撲。

 あの勝負の瀬戸際での驚異的な「粘り」。「粘り」とは、かつて日本人が崇めた徳目の一つであった。そしてそれは、「忍耐」という、これまた日本人伝来といわれることの多い徳目と密接に関連している。無論それは「熱しやすく冷めやすい」我々。「情勢が悪化するととたんに勢いを失う」我々の裏返しであり、つまり羨望であり願望であり、悔恨でさえあった面も見逃せない。しかしそこに怨念にも似た我々の“このみ”があり、またそれを地道に実行していた人々も確かに存在していたのも事実である。

 貴乃花には、そのような地道さだけでなく、“華”があった。

 悲愴感さえ漂わす、とのちに表現された彼の土俵は、最も正統的な「判官びいき」の対象でもあった。義経はチビであり、つねに寡勢で敵に当たり、そして非運であったではないか。

 どれももう、今はなき「日本の庶民感情・庶民道徳」だろうか。(ふん、強者を賛美する、健全な世の中、か。)

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 いや、何か主張したいわけではない。政治的意図などまっぴらだ。私はどちらかというと古い日本など好まない男だから。

 ただ、感慨を持つだけだ。
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