2010 03/14 15:02
松岡宮
詩懐石/夢京
夢京さんというのは、東京ポエケットで出会い、ブログを通じて交流している方です。
ブログにも詩を書かれており、昨年、念願の詩冊子を発行されました。感想書きます。
第一印象は、読ませるなあ、面白いなあ、というものでした。
テーマはご自身の仕事や生活の中で触れる社会的事象が中心。
文体がきっちりと整然としていて、読者に親切な文章です。
おそらく文章によって他者に何かを伝えるお仕事をされている方なのでしょう、
思いのすべてを言葉によってびっしり表現したいと、そんな思いが感じられ、
精緻さ、饒舌さが、ただごとでない、たとえば以下のような感じです。
>逞しく優しい父母たちは詩人ではないが 理想を歌う何よりの表現者である
>決して 左右に泳ぎ回るだけのコメンテーターが 理想を歌うわけじゃない
>未来的で 進歩的で 可塑的なライフスタイルと嘯くのは
>実体験に基づかない 情報メタボの世界像
そのぶん、余白がなく(物理的にも一行が長くて余白が少ない)、
すべてを言葉で表現しようという意志を感じます。まじめです。
「詩(ポエム)懐石」とか「おしながき」とか、遊びを入れよう
という意図は感じるのですが、読んでてリラックスできません(笑)
でもそれが良いのです。
詩の文法みたいなものを使ってないように感じられ、かえって新鮮な
文体だという印象を持ちました。わたしの知ってる誰にも似てない文体だなあ・・・。
そして、なんとなくブログのような詩だな、と・・そう書くと否定的な表現に
聴こえてしまうのでしょうか、肯定的な、先進的な意味で、日々塗り替えら
れるべき作品として、ブログのようだ、と。
作者自身も、詩と言うのは固定的表現でなく、日々アップデートされるものだという
イメージがあるのじゃないかな。わたし自身も、世に出た作品についても日々修正
してゆけたらいいのになあと思っているほうなので、この詩にも同様の「ノリ」を感じ、
共感したのです。
例えば、以下の表現。
>スポット派遣という雇用形態の非倫理性だけを論う議会
>年金支給額は減額が必至であるという試算は 与野党手を組んで叩き潰して
>若い労働者たちの 権利や幸福は 華麗にスルー
>カビの生えた既得権益を 昔の栄光だけで守る
このあたりも、10年後にはまた違う表現があることでしょう。
「枯れる」ことが予測できる表現は世の中にいくつも生まれますが、
枯れるかもしれないという理由で使わないのも、もったいないことです。
流行語を使うべきでも使わないべきでもなく、そのあたりはバランスでしょうが、
この詩集ではその点でも「攻めて」いるなあと思います。
世の中、言葉で表現できないことも多い、ということは、しばしば指摘されることで、
わたしも言葉での表現の限界に負けてしまうことが多いですが、
この作者には、ぜひ言葉で表現するということの限界まで突き進んで
ほしいと思いました。