詩集・詩誌のスレッド[113]
2006 09/17 23:11
松岡宮

Tongueを読む日曜日。Tongueとは、片野晃司さん&沼谷香澄さん二人で出していた、12冊組小冊子+ハコ付き、です。とはいえかなり「手に取りやすい」です。

片野さんの詩は「舌状大地」がテーマにあるということですが、くずおれる地層というのか、消えて行く城とか大地とか、人の営みよりはもっと地球レベル?の、大いなる喪失と記憶というのか、そんなイメージで読んでおりました。わたしの印象に残ったものは以下のフレーズ。

 そしてわたしたちは老いる
 苔生した石切り場跡の
 方形に欠落した垂直の岩肌に沿って
 ゴンドラはゆっくりと落ちていく
  (中略)
 ゴンドラをそこに留め 
 記憶は方形に欠落してゆき
 この詩は語り手を失ってしまう

・・・あ、なんか「そこで中略するなよ」ってところで略してしまいましたが、この最後の一行は「やられたよ」という感じです。関係有りませんが、昔はお墓なんていらない、散骨でもしてくれと思いましたが、いまはお墓も、あるいは古墳を作ってもらうのもいいかなあと夢想しています。死後のことも、考えてみると、ちょっとたのしい。

 沼谷香澄さんは短歌を中心として書いておられます。12号(最終号)の「貝塚」は、なんとなく「あの世」的な雰囲気が漂っていて、上で書いたようなことと符丁しますね。

  歯の無きは拷問の痕 頚無きは刑死 骨無きは−−笑止

  人の身体は水の風船水出して死ぬでなければ水入れて死ぬ

 なんか本道でないかもしれないけど、これらの短歌は・・・笑ってしまいました。からだぐにゃぐにゃ。ほんと、たかが身体。わたしはあまり短歌を読むのに慣れていませんが、内容というよりは言葉の響きとかのどごしを楽しむのが、沼谷さんの作品の場合にはいいのかなあ、と思いました。

松岡宮
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