RT会議室突発連詩ログ保管庫[41]
2005 05/16 04:19
いとう

突発連詩 三連二順計八連+苺(一語)摘み

丘 光平 → s → 薔薇 → いとう


雪散華ゆきざんげ


そのとき、私のなかで雪が降っていた
骨を噛む痛みにも似た
雪、雪、雪が降っていた

何もない坂道 灰色の建物
もの言わぬ街路樹たちにも そっと
目を閉じて 雪を降らせる

白い坂を上っていくと
白い石造りの家があり
冬の間笑わぬ女が 窓辺でレースを編んでいる

夏の日は来ない、朝日はない、空もない、冬
振り返ると雪の降る海
女は凍えながら さよならも知らずに

ああ、私は知っていたのだ
海は海へ帰ってしまうように
選び取るものは顧みないということを

沈みこむように音のない特別な日
幾通もの手紙を投げた
海へ 海の向こうへ 声もなき空の為に

散りゆく歳月を集め
滲もうとするたび 空は
無窮の果てに その色と香を喪失した

雪、雪、雪 滲む雪
空も海も雪に埋もれ
女は、笑わない 声は、届かない
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