2009 03/24 08:57
竜門勇気
あるところに君がいる。君は空っぽで何の能力もないが、自尊心と自由を傷つけられるのを非常に嫌っている。
時に君は君が嫌う出来事に出くわし、空っぽの拳を振り上げる。臆病者の防衛本能によって君は無事プライドを守りきる。場合によっては当分それを思い出せないほどに口の中をズタズタに切り裂かれる。
また多くの場合は自尊心共々、頬の内側よりも心に近い場所をズタズタにされる。それは、アイデンティティと呼ばれる器官だ。
そんな君をお調子者が”君はロックだな”と言う。
この時まだロックは愚か者を指す言葉だ。だが君はその気になり、ひびの入った君自身を奮い立たせ脆い自尊心を人に打たせる。
幾数の人が君の横を唾を吐きながら通り過ぎる。
やがて君は砕け散り、君の中にあった情けないほど矮小な自尊心や自己嫌悪や醜いもの全てが人の手の内に転げ落ちる。
砕け散った君の破片の中でまなこだけがやけにギラギラと憎しみを込めて人の手の中を睨みつけている。
お調子者が青ざめた顔で、”君はロックだな”と呟く。
そしてロックと言う言葉は本来の意味に肉薄する。