2007 04/16 08:38
Six
家へ帰る途中、女の詐欺師に引っ掛かりそうになったので、早足でようやく家にたどり着き、玄関を開けると死んだ父が居た。二階から死んだ祖父も顔を見せた。ああ、おじいちゃんも来てたのかと思う。別の日、居酒屋から死んだ父と腕を組んで家に帰る。「お父さん、今日も玄関まで?」と訊くと「もう死んだから家には入らない」と言うので、少しつまらない。今の自分の恋人の話をすると、父は「ダレソレは服ばかり気にしてるし、ダレソレは仕事を怠けがちだし、ダレソレは痩せすぎているから、お前の恋人が恐らく一番いい男であろう」と言った。しかしわたしは、今の自分の恋人の名前がどうしても思い出せない。ケンだったかしら。でもケンは、大学の時に付き合っていた男の名前で、わたしはコイツからこっぴどく振られたのだから、ケンでは断じて、ない。「今の恋人の名前が思い出せない」と父に言うと、父は寂しそうに溜息をついた。家に着き、玄関の鍵をあけようとすると、父はいつのまにか消えていた。