2004 11/02 17:36
一番絞り
「やれ、やれ」の、ここ何日かだったな。
これからもまた「やれ、やれ」が続くんだろうけど。
台風。地震。空爆、殺戮...処刑。
アメリカの刑務所の死刑囚担当看守が著した本に、本人による次のような言葉が帯に書かれていて
笑った。
《死はもっとも簡便にして廉価な商品である》
新潟地震と、イラクでの日本人旅行者処刑にまつわるマスコミの狂奔ぶり、間抜けぶり
吐き気のする痴呆的騒乱ぶりを、
ずばり言い当てているではないか。
これでもかこれでもかと毎日毎日、朝から晩まで、目と耳が擦り切れんばかりにヒューマンな「地震物語」を
生産するマスコミとそれを飽きもせず食い入るように「消費」する大衆。
子供の救出なんて、こころの隅で「よかったな」としみじみ温めるものであってね、まるで
大スペクタクル、手に汗の冒険映画みたいな報道にはげんなりだ。感動と汗の物語の垂れ流しに、
痴呆的に見入るものでもあるまい。
肝心な批判的報道はまるで少なかった。イラクでの青年の悲惨な出来事、こころからご両親には
お悔やみ申し上げるけれども、いずれも共通しているのは「情報の孤立化」ということか。
それへの反省があってこそ、この地震をきちっと「報道」したといえるのだ。
あるいはイラク旅行青年への政府の間抜けぶり。ほったらかしぶり。
読売系のテレビ局の知り合いが新潟に取材にでっぱなしで、電話をしたら
「こっちはもう、ものすごく盛り上がってんですよ!」
おいおい、悲惨な出来事なんだろうに。それを、われをわすれて合コンのノリで嬉しそうに返事してくる。
そんなに人の死が材料になるか。救出劇がおもしろいか。
それならどうしてイラクに旅行した青年の救出に全力をあげるようアホ政府、狂人小泉に
言わない。
あれだろう? イラクはもうすぐに国民の自主的な選挙があるんだろう? 戦地じゃないから自衛隊派遣したんだろう?
外国人が旅行もできない、そんなに危険な戦地なら自衛隊派遣は違憲だぜ。国民の自主的な選挙の始まる
平和な国ってうそだぜ。
二、三日前に出た米国の学者の統計によれば米軍の空爆によるイラクの一般市民の犠牲者は10万人だ。
イラク「戦後」のことだ。
あまりにも非対称ではないか。
もちろん子供が助かったことは嬉しいし、こころの隅でしんみり「よかったな」と思ったものだが、
なんだこの報道の加熱は。命というものがあまりにも非対称じゃないか。
ひとりの子供の救出劇にそれだけの心配りをそそげるのなら、10万人の戦後の米軍空爆犠牲者に
どうして一行の紙面も一秒の映像もさけない。
それができなければ、新潟の子供の救出劇が空疎になってしまうだろうに。
いのちへの意識のありようが普通じゃない。異常だよ、この国のひとたちは。そう思わないのか?
つくづく腐った国。国民だと思うよ。
唯一、正常なのは案外、いまの天皇陛下ひとりではないか。
それにしても今年の「秋の園遊会」での陛下の発言は強烈な皮肉と虹彩を放っていたな。胸がすっとしたよ。
園遊会に招かれた将棋の米長邦雄永世名人が天皇に向かって
「陛下、全国の小中学校で国旗と国歌が必ず掲揚され、歌われるよう、わたしは全力をつくします」
と言った。
すると陛下は口ごもり、
「あの...あのう...」言いずらそうに、それでもやっと、はっきりと言った。
「...それが強要や強制にならないよう、要望いたします」
わはは。まるで漫画ではないか。この米長という頓馬にしろ、反戦や反核を標榜しながら
勲章をもらえるとなると
文化人を代表して陛下の前でお礼の言葉を述べた新藤兼人とかいう映画監督にしろ、
君が代は意味はわからなくても口にすると気持ちがいいと述べた詩人、おっとこの詩人の名前を出すと
またあちこちから文句がくるからやめてと。
いったい世の中どうなってんの、ってことだわ。わははは。