ニューススレ[656]
07/14 16:36
もぐもぐ

>648
ボルカさん

日本の行動は極めてセンシティブな問題を孕んでいるので、あまり発言したくないというのが正直なところです。因みに先の投稿(645)でも、日本がどうすべきかということについて、特段言及してはいません。


日本のすべき行動、等の話になると、自衛隊合憲違憲の話から始まってしまうので、話がとても混乱しやすくなります。その上、国連決議の意味や内容が一体何なのか、把握していないと自衛隊派遣自体の意味がよく掴めません。


米国のイラク介入、及びそれに引き続く一連の行動は、国連決議(安全保障理事会決議)に基づいて行われていました。国連憲章においては、安保理決議は加盟国を法的に拘束するものとされています。

この安保理決議というものは度々出されているものなので、イラク戦争開戦に踏み切ることを受権した決議と、フセイン政権打倒後の治安維持・復興支援等を規定した決議は、恐らく別々のものでしょう。そしてそのそれぞれの決議において、国連加盟国に課せられている義務の種類や程度は異なっていることと思います。
つまり、国連の「強制行動」(イラクに対する武力行使)の段階と、「平和維持活動(PKO)」的段階(フセイン政権打倒後の治安維持・復興支援)とについては、一応区別して、別個に考えるのが適当ではないかと私は思っています。

「強制行動」は国連としては基本的に何ら問題のない行動ですが、日本の憲法上は明らかな武力行使です。日本がこれに直接参加し、若しくは後方支援を行うことは、武力の保持・行使を禁止する憲法との関係で、相当込み入った問題を生じさせます。
憲法的側面から言えば、今回のイラク戦争の場合には、何だか良く分からない間に強制行動についての後方支援がなし崩し的に行われた、という印象は否めません。かなり問題があるように思われます。議論を深めていかなければならない部分だと思います。

(なお、一般論として、国連の「強制行動」は、本来、戦争を起こした国家を撃退する(例えば湾岸戦争におけるように)ための仕組みでしたが、それが用いられる範囲は、過去の先例によって極端に拡張されてきました。戦争以外の事項について安保理決議の対象となった国が、繰り返しその決議に違反したような場合に、決議を遵守させるために強制行動が取られることがあります(例えば、アパルトヘイトを止めるよう求める安保理決議に繰り返し違反した南アフリカに対し、経済的な強制行動が取られたことがあります。今回のイラク戦争も、イラクが、大量破壊兵器についてその査察に協力するよう求める決議に繰り返し違反した、という、戦争以外の事項についての決議違反を理由とした「強制行動」です)。
このような、国連の安全保障体制本来の趣旨からはかなり異なった意味合いで行われる「強制行動」について、その正当性をどう捉えるかについては、憲法とはまた別に、一つ議論の余地があると思います。)


「平和維持活動」的部分については、通常のPKOの場合と同じように考えればよいのではないかと思っています。
平和維持軍(停戦監視・兵力引き離し団、PKF)本体への参加と、PKFへの後方支援やその他の人道支援、とは通常区別されて考えられています。
PKF自体は、国際的には中立で何ら問題のないものですが、それへの直接の参加は武器の使用を伴う場合があるため、憲法的な側面からはやはり問題が生じ得ます。他方、PKFへの後方支援・その他の人道支援の方については、カンボジアやモザンビーク等への自衛隊派遣の先例を通じて国内的な支持が得られたという経緯もあり、憲法的な問題が生じる虞は低いと思います。

PKF本体業務への凍結解除が果たして妥当だったのかについては、議論の余地がかなりあるとは思います。しかし、それへの支援・その他の人道支援の方については、特段問題を生じさせるようなものではないのではないか、と私は思っています。

今回(フセイン政権打倒後の復興人道支援のための派遣)は、はっきりとPKOと銘打たれているわけではないでしょうが、置かれている状況や役割として見ると、PKF的な部隊本体への参加というよりは、その他の人道支援等のパターンに類似するものと思われます。ですので、その派遣は、原則的には憲法的な問題を生じさせることはない、と私は思います。
勿論、それだけに余計、現地の状況が悪化し、派遣隊員の安全が危うくなってしまうような事態になった場合には、派遣国として、手遅れにならないうちに撤退することが望ましいでしょう。
(PKFと違って、復興人道支援をしている部隊は、そのような危険に対処する積極的な能力を持ちません。)
なお、この辺は、今回のPKO的部分が国連としてどのように執り行われているかにもよります。私はその詳細を良く知らないので、この点については何とも言えません。(各国が好き勝手にバラバラに支援活動をしているわけではないでしょうから、恐らく、PKO(的活動)全体として、現地の状況の悪化にどう対処するか、派遣国の間で話し合いながら決めていくような形になっているのではないでしょうか?PKO的活動とは言え、いつでも自由に自分の国だけ撤退するというのは少し難しいのではないかと想像します。勿論、他の派遣国の同意が取れれば問題ないのでしょうが)

なお、先の書き込み(645)との関係でいいますと、私は、米国(国連)が治安維持のためにより大きな軍事力を(PKF的に)駐留させる必要はあったのではないかと思っていますが、その軍事力の駐留・撤退の問題と、それについて後方支援・その他の人道支援をしている部隊についての駐留・撤退の問題とは、その機能が相当異なっていますので、おっしゃるとおり別個の問題だろうと思っています。


話題が話題だけに非常に込み入ってしまっていますが、イラク問題に関係する日本の行動について、現在の私の考えはこんなところです。
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