ひとつ すぎて
木立 悟




離れまたたく
雨に近いもの
光を結び
ひとつ雨になる


まるい夜が
まるい夜をすぎてゆく
音は森の上に残り
枝を伝い 土を照らす


点かなくなった灯の下で
握り返す手のひらがあり
手のひらしか見えないのに
あたたかくじっとそのままでいる


淡く拙いもののほうへ
色と音は傾いてゆく
影のなかに立つ声が
またたく土を見つめている


鳥の横顔になり
化物の横顔になり
雪のなかの枝々は
足もとの水に目をふせる


手のひらはまぶしくなってゆく
灯が終わり 道が終わるのに
もう指は見えないのに
あたたかくじっとそのままでいる


音のなかに浮かんでは沈む
すべての化物 かたち無き子ら
雨でもなく光でもない
すぎゆく夜の明るさに抱かれる














自由詩 ひとつ すぎて Copyright 木立 悟 2007-01-06 01:12:52
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