黄昏譚
青色銀河団
誰かが結び目をほどくように
この世からすべての母はいなくなってしまった
それからというもの
わたしたちはわたしたちのてのひらに
なにかしら母と呼べる物を乗せ
黄昏の明かりにそれらをかざし
祈るように透かしてみては
検分し
わたしたちの遠い死までのあいだ
めざめればいつもひとりであるように
とじられたまぶたの裏側で
この渇いた流れを
幾度も反芻してきた
形あるものすべて
不意に流れゆく定めであり
わたしの母もまた
夕暮に捉えられたまま
薄墨となりながされていった
夕闇の台所に
ふきこぼれた鰈の煮付けを
残したまま