神楽坂
うめバア

朝日の登る神楽坂通りを
白い息吐きながら、歩いていたころは
昼の12時と夜の12時で
なぜ一方通行の方向が変わるのか
そればかり聞かされていた気がする
カクエイドオリは
故・田中首相と神楽坂との桃色関係
だったんだって


ホントかな
オトナかな
ホントカナ
オトナカナ…

桜舞う外堀通りからの上り道
ペコちゃんの人形焼き片手に
毘沙門様にお願いしてた

あたしのしごと うまくいきますように
月収16万じゃ やっていけません
いつかあそこの鳥茶屋で
ごちそういただいてみたいから

お風呂屋さんへの近道は
石畳の階段
大久保通りの角には
今にもぶっつぶれそうな瀬戸物屋さん

赤いかんざしに胸躍らせて
きれいなお姉さんにため息ついて
草履屋さんで恋する浴衣
両国の花火の夜
今年は憧れのままじゃなく

ベーカリーの甘い匂いに
ほっとやすらいで
珈琲屋さんで
あの映画の俳優をチラリ見る

あたしも素敵になれますか
いつか、いつか、いつか

愛しの路地を迷うのは
曰くありげな旅館を見たいから
真昼 静かな引き戸のすき間から
なにが匂うか
つきとめてみたいから

坂の上のアパートの
外階段を登ってた頃
神楽坂に住んでいた


自由詩 神楽坂 Copyright うめバア 2007-01-04 16:54:21
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