断片集
吉田ぐんじょう


ずいぶん昔
わたしたちは恋人同士だった
あんなにも完璧に
理想的な形で
つながっていたのに
満月の夜だっただろうか
わたしが
あの柔らかな部屋から
いとも容易く
追放されてしまったのは
一緒に流れ出した羊水は
外気にふれると
途端に厭なにおいをたてたから
もう
何だか
泣くしかなかった


男の人は
抱きしめると
掌くらいの大きさの
さびしい林檎になってしまう

女の人は
くちづけると
六月くらいの大きさの
青い水たまりになってしまう


君のスリッパが
学校の焼却炉の前に
ぽとんと脱ぎ捨てられていた
まだ温かい炉の中には
少しだけ白い灰が残っていた
空を見上げて笑っているような
それは
マイルドセブンのにおいがした



未詩・独白 断片集 Copyright 吉田ぐんじょう 2007-01-02 19:01:50
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