雪原の足跡
服部 剛
いつまでも
ひとりでいるのはさみしくて
旅先で
出逢ったきみに会うために
遠い雪国へ
ぼくはゆく
金はなく
新幹線にも乗れず
長いトンネルを抜けた
夜行列車で目覚めると
車窓の外はましろい夜明け
辿り着いた
無人の駅をひとり降り
寒がりな身をちぢめながら
ひろい雪原を
ぼくはゆく
ずぼずぼ と
ただ ずぼずぼ と
ましろい雪に足をうずめて
( きみと向き合い
( 蕎麦を食べるという夢を
( こころに抱き
雪原の彼方に浮かぶ
きみのほほえむまぼろしのほうへ
かじかむ手に一輪の花を握り
ポケットには一通の手紙をしたため
そのほかはなにも持たずに
ぼくはゆく
ずぼずぼ と
ただ ずぼずぼ と
背後に遠くつらなる
足跡を残して