転校生
ピクルス

 
黄昏の席から
いつも見ていたプール
その底に沈んだ石を
誰にも内緒で拾いたくて
夜中に学校に行った
天気予報は雨
錆の味がする梯子を
黒豹になって昇る
銅鑼の満月灯り
忍び足
虫の音
救急車
破裂して仕舞いそうで
賛美歌の切れ端のように
シャツの裾を握った

輝く水面に
あの子のシルエットが
スロウモーションでスクロール
うんざりするほど
綺麗な流線型
奥歯を噛みながら
無事を祈った
ほら、
天使のスポイト
降ってきて
石は石は、
びしょびしょになって
罪を滅ぼすだろうか
手慣れた仕草で
手を振る奴には
なれなかった
滲んだ三半器官
水の森のプリズム
真珠色の25メートル
眼を伏せて
見送った
まだ歓声が聞こえる
僕は
17才になったので
髪を伸ばしたので
花束を買ったので
独り言のように
俯いたまま
大切な
名前を呼んだ




自由詩 転校生 Copyright ピクルス 2007-01-01 20:37:01
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