葬式写真描き
蒸発王

彼は鉛色の鞄
白いカンパスに
12色のアクリル絵の具
一本の筆で
いつも
橋の上で絵を描いていた


『葬式写真描き』


ソコは私の昼寝スポットで
よく鉢合わせをした
たかだか猫一匹と
私が聞いても解らないと思って

ぽつぽつ独り言を言って
怪しさがさらに増した

鉛色の鞄には何枚もの
完成したカンパス
爪を研ぐと彼は怒り
其れとはまた別の哀しそうな顔を映し

これらの絵は
葬式写真だと


ぽつり



漏らした


考えれば
この橋も来年の三月に
壊され
流れる
小川はセメントに固められ
家が立つ


この橋の風景は
もうすぐ
死ぬ


私は絵が完成するまで
昼寝をやめて

その様を見守り


年があけて
彼はまた別の絵を描きに旅に出


春が訪れ

私も出てしまった



きっと
彼は今も何処かで


葬式写真を描いている









『葬式写真描き』


自由詩 葬式写真描き Copyright 蒸発王 2006-12-31 23:39:21
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