オン書き即興2
佐々宝砂

さらりさらりらと滑りゆく夜明けに
生まれ変わることなどないだろう
視界半分に偏頭痛性閃輝暗点
この輝きを誰かに伝えることなど
できないだろう

モザイクかかった風景に
ひよどりが一羽やってきて
まだ素っ裸の桑の木に止まり
名前にふさわしいやかましい鳴き声をあげる
そんなに明るくはない未明の空は
ぼんやりと曇っていて
特別にかなしくはない
くらくもない
モザイクがかかっていて
それだけが問題

睡眠薬を服んで
まだ布団には入らないで
両手を組んですわっている
堕ちてゆける時間はまだこない

それでも
さらりさらりらとときはすべる
いつかはすべりおちる

それでも
今はまだモザイクかかった風景を
見つめていなくてはならない

眠りにおちて
目がさめたら
私は確実になにかを喪うだろう
そのとき鏡を見ればわかる
なくしたものはみえない
みえないので
私ははじめてそれを理解するのだ


自由詩 オン書き即興2 Copyright 佐々宝砂 2004-04-04 05:26:11
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