薄幸そうな女
たもつ


薄幸そうな女が歩いていく
カツカツカツカツ通りを歩いていく

お気に入りの赤いコートを着て
カツカツカツカツとブーツの音を響かせて
薄幸そうな女が歩いていく

背筋をピンと伸ばし
長い髪を手で掻き分け
早足で通りを
カツカツカツカツ歩いていく

そんなに急いだところで薄幸なのに
薄幸だというのに

僕は喫茶店のいつもの窓際
モーニングのコーヒーを飲むのに必要な
5ミリグラムのミルクを正確に計量しようと
目の高さまでスプーンを持ってくる

薄幸そうな女は薄幸だから
きっと駅前の段差で蹴躓く

僕がむず痒いのは
6ミリグラムのミルクのせい





自由詩 薄幸そうな女 Copyright たもつ 2003-08-07 10:42:20
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