キリンの夢
A.おじや

キリンの夢はネコに預けてしまったので
眠りっぱなしのネコのせいで
キリンは今日も眠れない

腫れあがった両の目玉を
涙でぐしょぐしょの長いまつげで押さえている

細長い紫色の舌を伸ばして
高木の葉を不味そうに噛みながら

長すぎる喉を溜め息が上り
下りてきた食事とぶつかって
ああ飯も喉を通らない

頬のこけた
悩ましいアフリカの珍獣

僕の足元のネコのために
キリンがこれ以上苦しまないように

貪欲に他人の分まで夢を見て
幸せそうに舌なめずりしている図々しいやつを
思いっきりひっくり返してやる

生意気にぐうなどと不満を漏らし
のそりのそりと行ってしまった

ああ今このとき
アフリカのキリンが
つかの間の眠りを手に入れた

コタツの中でやわらかく
とろけるようになった夢
ネコに預けたキリンの夢

キリンの黄色が鮮やかに
茶色のまだらも鮮やかに

ライトアップされたエッフェル塔のようになって
キリンはすばらしい夢の前に立ちつくす

再びネコの眠りに奪い返されるまで
ほんのわずかな時間だったけど


自由詩 キリンの夢 Copyright A.おじや 2006-12-28 20:14:24
notebook Home 戻る