冬の雨
落合朱美
うすずみ色の空はひくく
ピアノ線を地におろし
哀しみという歌をかなでる
さえずる鳥さえもいない
こんな午後は
暴かれてしまうことをおそれて
いくどもたしかめた肌の
ぬくもりの記憶を封印しよう
くすり指の先を
とじた瞼の上に置いたなら
もう流れおちるものなど
ないように
これからの私は
無口な女になろうと思う
知られたくない秘密は
つややかな雨に濡れて
透きとおってゆけばいい
自由詩
冬の雨
Copyright
落合朱美
2006-12-28 19:39:23
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