種火
松本 卓也

眠る前のひと時
部屋灯りを落とし
目を瞑って思う

窓を叩きつける風
少しずつ強く響く

胸に手を当てて
一つ一つ振り返り
犯してきた罪の数と
贖ってきた孤独を
天秤にかけながら

待っていたい声と
告げたかった言葉
どちらも選べないで

夜が瞼に張り付いて
意識は少しずつ遠ざかるのに
眠りだけは一向に訪れない

不安が心に帳を下ろす
詠うだけしか能が無い
哀れな残像が映っていて

涙を流すには遅すぎる
休まる場所さえ見つからない
君にさえ見限られた詩
何処に投げればいいの?

意味を賭けてみたとしても
真空に引き裂かれた心は
生活の中に埋もれ
見つける事ができなくなった

きっとこの声は
本当に届けたい場所に
飛ばすほど力がないのだけど

何故 何故に
声を張り上げる

夜が遮る声の行方を
知る術など初めから失われ
きっと触れられる事も無く
小さく死に絶えるだけなのに

求める声が届かないで
もはや失われた約束は
天井に揺らめく陽炎となり

小さく

燻るだけ

なのに


自由詩 種火 Copyright 松本 卓也 2006-12-28 01:20:54
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