アクター・イン・アパートメント
マッドビースト

冷たく重い雨が降ってきて
僕らは迫害されるように
俯いて足早に穴倉へ戻った

雨粒が地面を打つ音に耳を澄ませば
世界が広がっていることを想像できるが
穴倉は狭く隔絶され誰からも見つからない場所にあった

昼の世界は舞台のようだ
生きるための役が決まっていて
皆が演じる

男も女も
季節や太陽も
今は雨が主役の場面だ

役者はときどき楽屋へ戻って一人になる
そして考える
このショーの意味を
自分の役を

もっと自分にふさわしい違う役があるのかしら
このステージの裏側にはなにがあるのかしら
このショーの台本はだれが書いたのかしらと

それでも結局はまた自分の出番が来て
少しづつ役を変えながらそれでもステージで演じ続ける
前衛が登場しオーソドックスになり忘れ去られる
演じることを終えることはできない
自分の役を変えることだ
新しい言葉
新しい表現
演じ続けることが自分だ

冷たく重い雨粒が地面を打つ
迫害された僕らは俯いて穴倉へ戻る
小粒の赤い宝石で愛というマグマの小石も
冷え切ってしまってなにも言わないほどに雨が降っている


未詩・独白 アクター・イン・アパートメント Copyright マッドビースト 2006-12-27 00:40:11
notebook Home