射手座
佐野みお

私が知らない、あなたの息遣いがある
私が知らない人の前でその息遣いを
あなたは、する
固く組んだ指を解いて
代わりに軽く瞼を閉じて

あなたの裸体を描くことができる
その正確さにやるせない自信がある
ガラス窓に映る
宙吊りの裸婦像に悩み
カーテンを引く

あなたはあなたの苗字に帰り
今夜シチューを作っているかもしれない
私はあなたのgiven nameに
昼間の残り香を探している

互いの汗ばんだ肌に触れたときに
私もあなたもすでに裁かれている
引き受け続けるしかないと知ることで
罪は執行済みのはずだろう
獄舎にとどまっているのは
二人の自由意志によるものだ

私たちの存在が少し悲しいのは
共同で行いうるのはただ一つ
侵犯することだけだからだ

あっ、射手座
とあなたが小さく叫んだあの夜
二人を包み込んだ風が
窓のわずかな隙間から忍び込み
カーテンをかすかに揺らしている


自由詩 射手座 Copyright 佐野みお 2006-12-25 21:30:43
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