かけあし
よーかん


日曜日。
今年もあとわずか。

クリスマスイブ。

なんだか空が青いから、
ピンとこなくて妙な気分。

国道を歩いた。

明日は仕事だけれど、
今日は休みだし、
これと言ってやることないし、
会いたいヒトも今年はいないし、

言い訳がましく
まあいいけれど、と。

駅前をさけて裏通りを歩き
国道に出て歩調を速める。

カシミヤコートの中年カップルとすれ違う。
黄緑色の軽自動車が駐車場に滑り込む。
ボクはウォークマンで耳塞ぎ、
一年はき潰した丸い革靴で、
歩道を蹴って、うつむき加減に。

二人づれとすれ違う。

少女が背伸びで、
クリスマスなデートのヨソイキ。
でも二人とも女の子。

あきらめがつかないのかな。

それとも誰かが待っているのか。
クリスマスイブの日曜くらい、
外で何かしていないと、
何かのイベントにでも、
参加出来ている自分でいたいと。

中学生なのか高校生なのか、
わからないけど、
そんな感じじゃないかなとか思いながら、
微笑みそうになる自分を抑えて、

信号に眼をやりナニ食わぬ顔を。

心配ばかりの世の中だから。
安全な距離を保ってあげたい。

そういう気配りも、
たぶんキミ悪がられるだろうと、
考えすぎの中年未満。

国道を歩く。

ガソリン入れる作業着の男と、
窓を拭いてる専業主婦と、

みだれた髪型のお水なカッコの女子高生と、
半ズボンのサッカー少年。

クリスマスイブの昼下がり。

本マグロのデカイ看板。

回転寿司屋の色あせた電飾。

自動ドアの前で携帯の白いセーター。

大声で話す。
ニヤケタ唇、
皮下脂肪を縛る下着のライン。

ボクの同級生のおカアサンが、
運動会の弁当の時間、
真っ赤な口紅でイナリ寿司をほお張ってたのが、
なんか気味悪くて、

ボクはみかんを眺めて、
ボクは体育座りで自分の母親を見て。

同級生の黄ばんだ靴下が、
なんだかとても悲しくて、

そんなことを思って、
なんでそんなこと今さらと、
分析している自分を笑って、

あの携帯のオンナの、
本マグロな看板の、
本物に似せてつくられたイクラみたいなのの、

ピンク色に湿ったハマチの握りの、
国道沿いの排気ガスまみれの柿の木の、

ダイハツのディーラーの駐車場の、
大型ディスカウント酒店の、

焼肉やの木彫りの看板の、
放置されて赤く錆びたホンダシビックのワイパーの、

自動販売機の列の、
ビン・缶のゴミ箱の、
ブックオフの、

月極め駐車場の、
緑色のフェンスの、
みなで守ろう子供の安全の、
フィリピンパブの看板の、

自転車屋の、
郵便局の、

赤信号の、
右折車両の、
プッシュボタンの、

しばらくおまちくださいの、

青空は、
クリスマスイブだと言うのに、

雲ひとつなく、
どこまでも高く、

ボクは国道を早足で歩き、
乳母車を押すおカアサンが、
ボクの横顔をチラリと値踏みして、

乾いた肌のジイサンが、
ビッコを引いて、
手には軍手で、

どこまでも空は高いから、
どこにでもボクはいけるのに、

ケラケラと笑いながら、
駆け足でボクの横をすり抜けた少女は、
黄色いトレーナーを腕まくりしてて、

ケラケラケラケラと駆け足で、
ボクが行くはずだった場所に向かって、

駆け足で、
青い空の下を、

国道沿いのこの歩道を、
ケラケラと
ケラケラと、

駆け足でケラケラと。

クリスマスのイブの昼下がりを、
駆け足で、
ケラケラと。











自由詩 かけあし Copyright よーかん 2006-12-24 20:11:55
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