微笑みの春
あおば



三月になると風が吹く
春の女神はすたすたとやってきて
荒野に隠れているものを見つけては
小さなろうそく握らせ火を付けて
外へと誘っているのが見える

たしかに
春はすべての成長を促して
荒野に緑の沃野をつくりあげ
もうこれでいいと思ったら
微笑だけを気配に残し
黙って夏に引き渡す

れんげ摘む短い髪の女の子
  猫抱き上げて僕を見る

ところが初夏の空は
のうてんきなおしゃべりだから
いつも返事に困ってしまうのだ






作2001/03/14
初出「詩人ギルド」


自由詩 微笑みの春 Copyright あおば 2006-12-23 04:49:26
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