「 名探偵は、きみか?。 」
PULL.







猟奇殺人は世の常と、
皆がこぞって斬りたがって、
皆殺し。




死体がふたつで腕が三本足五本。
さて死んだのは何人?。

腕には、
それぞれ文字が切り付けられている。
これは何だ、
何と読む。



「ひとりめはへびとまぐわいひとでなし。」


「ふたりめはふていをおかしうでがなし。」


「さんにんはつみをおかしていのちなし。」






そして五本の足にも、
腕と同じく文字が斬り付けられている。



「ひとつだれもしらぬつみもある。」


「ふたつだれもしなぬつみもある。」


「みっつだれかがしればつみになる。」


「よっつはなせばだれかしにいたる。」


「いつつだれもがしねばつみはない。」






腕は上の句か、
では足は下の句だが…。
あの字余りは、
何なのだ。




検死で二つの胴体の胃袋から、
紙切れが発見された。

その紙切れは飲み込んだのではなく、
死後に詰め込まれたものだった。



「盗人は命盗まれ命乞い。
 ああ許せし心、
 我に無し。」

「おぞましきけだものは人を喰らいて涙を流し罪を贖う。」






白骨化した腕が発見される、
その腕の骨は二本ある。

骨には文字が彫り込まれていた。
それは数の合わなかった、
上の句。



「ひとでなしよにんはしにんとよむなかれ。」


「つみしらずつもるるゆきにまもられし。」






DNA検査の結果。
胴体も腕も足も、
すべてが別人だった。


では一体誰が、
これだけの人を殺し、
死体を斬り刻んだのか。

一本の腕だけでひとりの死体、
ならば残りの部分はどこに。

腕一本足一本。
失えば、
人は死ぬのだろうか。
それでも、




それと引き替えに人を殺すのはけだものではなく人ひとごろし。






死体の増えぬ夜は、
なぜかとても不安になる。





犯人は眠る。












誰が犯人かではない誰が犯人になりたいかだ探偵くん。












           了。



短歌 「 名探偵は、きみか?。 」 Copyright PULL. 2006-12-23 04:24:12
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